1 定義と基本概念
1.1 寄与率の数学的定義
寄与率は、全体の変動や結果を構成する複数の要素のうち、特定の要素が占める割合として定義される。数学的には、全体の分散や誤差平方和を基準値とし、各要素の寄与分をその基準値で除した値で表される。一般式は \( \text{寄与率} = \frac{\text{要素の寄与量}}{\text{全体の総変動}} \) であり、0から1の範囲(パーセント表記の場合は0%から100%)をとる。
1.2 寄与率と説明率の関係
寄与率と説明率はしばしば同義的に用いられるが、厳密には説明率がモデル全体の当てはまりを示すのに対し、寄与率は各要素がその説明率のうちどの程度を担っているかを分解した指標である。例えば、回帰分析における決定係数(R²)はモデルの説明率であり、各変数の寄与率の和がR²に等しくなる(直交性が成り立つ場合)。
1.3 寄与率の種類
1.3.1 分散寄与率
分散寄与率は、主成分分析や要因分析において、各主成分や因子が全体の分散のうち説明する割合を指す。固有値を全固有値の合計で除して算出され、データの情報圧縮の程度を評価するために用いられる。
1.3.2 因子寄与率
因子分析では、各因子が観測変数の分散を説明する割合を因子寄与率と呼ぶ。因子負荷量の二乗和を変数の総分散(通常1に標準化)で除して得られ、共通因子の影響度を示す。
1.3.3 回帰寄与率
回帰分析では、各説明変数が目的変数の変動に寄与する割合を回帰寄与率という。標準化回帰係数や偏決定係数を用いて評価され、変数の重要度の比較に利用される。
2 計算方法
2.1 主成分分析における寄与率
2.1.1 固有値に基づく計算
主成分分析では、データの分散共分散行列または相関行列の固有値を \(\lambda_1, \lambda_2, \dots, \lambda_p\) とすると、第 \(k\) 主成分の寄与率は \(\lambda_k / \sum_{i=1}^p \lambda_i\) で計算される。この値は、その主成分が元データの全分散に対して担う割合を示す。
2.1.2 累積寄与率
累積寄与率は、第1主成分から第 \(m\) 主成分までの寄与率を順次累積した値である。\(\sum_{k=1}^m \lambda_k / \sum_{i=1}^p \lambda_i\) で表され、採用する主成分数(次元削減の基準)を決める際に用いられる。通常、累積寄与率が70~90%に達するまで主成分を採用する。
2.2 因子分析における寄与率
2.2.1 共通性と独自性
因子分析では、各観測変数の分散は共通因子によって説明される部分(共通性)と独自因子による部分(独自性)に分解される。共通性は因子負荷量の二乗和で、独自性はそれ以外の残差分散である。因子寄与率は、全変数の共通性の合計を変数数(または総分散)で除した値としても解釈される。
2.2.2 因子負荷量からの算出
特定の因子 \(j\) の寄与率は、その因子に対する全変数の因子負荷量 \(a_{ij}\) の二乗和 \(\sum_{i=1}^p a_{ij}^2\) を変数数 \(p\) で除して求める。これはその因子が全変数の分散を平均的にどれだけ説明するかを表す。
2.3 回帰分析における寄与率
2.3.1 決定係数(R²)との関連
回帰分析の決定係数R²は、モデル全体が目的変数の変動を説明する割合である。各説明変数の寄与率は、R²を構成する個別の要素として、変数間の相関構造に応じて分解される。例えば、標準化偏回帰係数と変数間の相関係数から算出される。
2.3.2 偏決定係数
偏決定係数は、他の変数の影響を除去した上で、特定の説明変数が目的変数の変動を説明する割合である。部分R²とも呼ばれ、その変数のみを追加したときのR²の増分として計算される。これにより、各変数の固有の寄与率を評価できる。
3 応用分野
3.1 統計的品質管理
3.1.1 要因分析への活用
製造工程における不良原因の特定に寄与率が用いられる。分散分析や実験計画法により各要因が品質特性のばらつきに占める割合を算出し、改善すべき主要因子を優先順位付けする。
3.2 経済・金融分析
3.2.1 ポートフォリオのリスク寄与
ポートフォリオ理論では、各資産がポートフォリオ全体のリスク(分散)にどの程度寄与しているかをリスク寄与率として定量化する。これにより、リスク分散の効果や集中リスクの把握が可能となる。
3.3 機械学習
3.3.1 特徴量重要度との対比
機械学習における特徴量重要度(例えばランダムフォレストのGini重要度やSHAP値)は、予測モデルにおける寄与率の一種とみなせる。しかし、伝統的な統計的寄与率がモデルの解釈可能性に重点を置くのに対し、特徴量重要度は予測精度への影響度合いを直接測る点で異なる。
4 解釈上の注意点
4.1 寄与率の限界
4.1.1 多重共線性の影響
説明変数間に強い相関(多重共線性)がある場合、回帰寄与率の分解が不安定になり、個々の変数の寄与率が過大または過小に評価される。このため、変数選択や正則化手法の併用が推奨される。
4.1.2 サンプルサイズへの依存
寄与率の推定値はサンプルサイズに影響を受ける。小サンプルでは偶然の変動による偏りが大きく、信頼性が低下する。また、外れ値の存在によっても寄与率が歪められる可能性がある。
4.2 誤った解釈の防止
寄与率は因果関係を示すものではない。相関や分散の分解結果に過ぎず、高い寄与率を持つ変数が直接の原因であるとは限らない。また、寄与率の合計が100%を超える非加法性(相関による重複説明)にも注意が必要である。
5 関連概念との比較
5.1 寄与率 vs 寄与度
寄与度は、全体の変化量(例えば増加量)に対する各要素の変化の寄与分を示す指標であり、時系列データや指数分解において用いられる。寄与率が割合(比率)であるのに対し、寄与度は絶対的な寄与分を表す点が異なる。
5.2 寄与率 vs 影響力
影響力は、回帰分析におけるクックの距離など、特定の観測値がモデル推定に与える影響を測る指標を指す。一方、寄与率は変数全体の平均的な説明力を評価するものであり、個別データ点ではなく変数自体の重要性を対象とする。