1 概要
避雷器は、送配電設備や各種電気機器を、雷サージや開閉サージに伴う一時的な過電圧から守るための保護装置である。平常時にはほとんど電流を流さず、異常な電圧上昇を検知すると電流の逃げ道をつくり、機器に加わる負担を抑える。
電力系統では、絶縁破壊や機器停止を未然に防ぐ要素として重要であり、変電所、架空送電線、配電線路、工場設備など広い範囲に用いられる。保護対象や設置条件に応じて、形式、定格、構造、保守の考え方が異なる。
2 原理
避雷器の基本は、通常は高い抵抗を示し、異常時には急速に低抵抗へ移ることである。この性質により、普段の運転を妨げずに、瞬間的な過電圧だけを効率よく処理する。
2.1 通常時の動作
平常電圧下では、避雷器内部の素子はほぼ絶縁体のようにふるまう。そのため漏れ電流はごく小さく、電力損失も限定される。
この状態では、保護装置として待機しているだけで、電路の動作に大きな影響を与えない。
2.2 異常電圧時の動作
雷による誘導電圧や開閉操作で発生するサージが加わると、避雷器は急激に導通し、過電圧エネルギーを大地へ逃がす。これにより、接続機器の絶縁に過度の電圧がかかるのを防ぐ。
導通の立ち上がりは速く、保護対象の応答より先に動作することが求められる。
2.3 放電後の復帰
サージが収まると、避雷器は再び高抵抗状態へ戻る。自動的に復帰するため、通常は一回ごとに手動操作を必要としない。
ただし、繰り返し大きな放電を受けると性能が低下することがあり、定期点検が必要になる。
3 種類
避雷器は、内部構造や主な用途によっていくつかに分類される。かつては放電ギャップを備えた形式が広く使われ、現在は酸化亜鉛素子を用いる無ギャップ形が主流である。
3.1 ギャップ付き避雷器
この形式は、放電ギャップによって通常電圧時の通電を抑え、過電圧時にアークを発生させて電流を流す。構造が比較的単純で、初期の電力設備で広く採用された。
一方で、動作電圧のばらつきや復帰特性の制約があり、より高性能な後発方式に置き換えられる場面が増えた。
3.2 酸化亜鉛形避雷器
酸化亜鉛の非直線抵抗特性を利用する方式で、現在もっとも一般的である。平常時は高抵抗を保ち、過電圧時には急激に抵抗値が下がって大電流を吸収する。
ギャップを持たない構成では、応答が速く、保護性能が安定しやすい。電力系統の多くの場面で標準的な選択肢となっている。
3.3 用途別の分類
設置される系統の電圧階級や保護対象によって、求められる性能が異なる。したがって、同じ避雷器でも用途に応じて設計が変わる。
3.3.1 送電用
高電圧系統の雷害対策に用いられ、変電所や送電線の保護を担う。大きなサージエネルギーへの耐性が重視される。
3.3.2 配電用
配電網では、比較的身近な設備を保護するために使われる。構成は小型化され、設置の容易さも考慮される。
3.3.3 機器保護用
変圧器、回転機、コンデンサ設備など、特定機器の端子近傍に取り付ける場合が多い。機器固有の絶縁耐力に合わせた選定が必要になる。
4 構造
避雷器は、外部から見える筐体と、内部で電気的動作を担う素子群から成る。耐候性、絶縁性能、放熱性、機械的強度のバランスが重視される。
4.1 外部構成
外側は磁器や樹脂製の外被で覆われることが多く、内部を湿気や汚損から守る役割を持つ。端子部は接続の確実性を確保するため、機器や接地線に合わせた形状になっている。
屋外用では、雨風や塩害への対策も重要である。
4.2 内部素子
内部には、過電圧を制御する中心部と、それを支える絶縁部が組み込まれる。小型であっても、性能に直結する精密な構成が要求される。
4.2.1 非直線抵抗素子
主として酸化亜鉛を用い、電圧と電流の関係が強い非直線性を示す。これにより、定常状態では電流を抑え、サージ時のみ大きく導通する。
4.2.2 絶縁部
内部素子を保持し、外部への漏れや短絡を防ぐための部分である。電気的な絶縁だけでなく、熱や機械的ストレスにも耐える必要がある。
4.3 接地との関係
避雷器は、通常、保護対象と接地系統の間に接続される。異常電圧を地中へ逃がすには、接地の品質が大きく影響する。
接地抵抗が高い、あるいは接続が長い場合、期待した性能が十分に発揮されないことがある。
5 性能と定格
避雷器の選定では、単に耐電圧が高ければよいわけではなく、系統条件に応じた複数の定格を確認する必要がある。誤った選定は、保護不足や不要動作につながる。
5.1 定格電圧
定格電圧は、避雷器が継続的に耐えうる基準電圧を示す。系統の最高使用電圧や接地方式を踏まえて決められる。
適切な値を外れると、平常時の負荷や誤動作の原因となる。
5.2 制限電圧
サージ発生時に、避雷器が保護対象へ伝える電圧の上限に相当する。値が低いほど保護性能は高いが、設備条件との整合が必要である。
保護対象の絶縁耐力を下回ることが望ましい。
5.3 放電耐量
繰り返しの雷撃やサージに対して、どの程度のエネルギーを吸収できるかを表す。大容量の系統では、この余裕が重要になる。
耐量を超える負荷を受けると、素子劣化や破損の原因となる。
5.4 保護レベル
保護レベルは、避雷器が実際にどの程度まで機器を守れるかを示す総合的な指標である。制限電圧、応答速度、接地条件などが関係する。
単独の数値だけでなく、配線の長さや設置位置を含めて評価される。
6 設置
避雷器は、取り付け場所と接続方法によって実効性能が大きく変わる。机上の定格が同じでも、現場条件が異なれば保護効果は変動する。
6.1 設置場所の選定
保護対象に近い位置へ置くほど、効果を得やすい。特に機器保護では、端子近傍への設置が基本となる。
変電所や屋外設備では、保守性や他機器との干渉も考慮して配置する。
6.2 接続方法
接続は短く、確実であることが望ましい。導体の曲がりや余分な長さは、サージ時の電圧上昇を招くことがある。
接地側の接続も同様に重要で、締結状態や腐食の有無を確認する必要がある。
6.3 配線距離の影響
避雷器と保護対象の間の距離が長いと、その間の配線インダクタンスにより保護電圧が高くなる。結果として、表示上の性能を十分に使えない場合がある。
6.4 環境条件への配慮
高温、低温、湿度、塩分、粉じん、振動などは性能低下の要因となる。屋外環境では、とくに汚損や絶縁表面の劣化に注意が必要である。
周囲条件に応じて、外被の材質や耐候設計が選ばれる。
7 点検と保守
避雷器は通常無停止で働くため、不具合が外見から分かりにくいことがある。したがって、定期的な確認と診断が重要になる。
7.1 外観点検
ひび割れ、変色、膨れ、漏れ痕、接続部の緩みなどを確認する。外装の異常は、内部損傷の兆候である場合がある。
周辺の汚損や水分の滞留も併せて点検する。
7.2 劣化診断
漏れ電流の測定や、素子特性の確認によって劣化を判断する。長期使用品では、外観だけでは状態を十分に把握できないことがある。
診断結果は、設備の重要度や使用環境と合わせて評価される。
7.3 交換の目安
明らかな破損、特性の低下、規定値を超える漏れ電流、あるいは繰り返しの過大サージ履歴がある場合は交換対象となる。安全性を重視し、疑わしい場合は早めの更新が選ばれる。
設備停止のリスクを抑えるうえで、予防交換は有効である。
8 関連する保護機器
避雷器は単独で機能するだけでなく、他の保護機器と組み合わせて使われる。役割の違いを理解することで、電力設備全体の保護体系が明確になる。
8.1 避雷針との違い
避雷針は、建築物や構造物に雷を誘導して安全に地面へ流すための設備である。一方、避雷器は電気回路内の過電圧を抑える装置で、保護対象が異なる。
両者は目的が近いようでいて、対象と動作場所が明確に分かれている。
8.2 保護リレーとの関係
保護リレーは、電流や電圧の異常を検出して遮断器に指令を出す装置である。避雷器が過電圧を吸収するのに対し、保護リレーは系統事故の切り離しを担当する。
そのため、前者は瞬間的な電圧抑制、後者は事故区間の分離という役割分担になる。
8.3 サージ保護装置との関係
サージ保護装置は、一般に過渡的な過電圧を抑える装置の総称として使われることがある。避雷器は電力系統向けの代表的な装置であり、用途によっては広い意味でサージ保護の一部に含められる。
ただし、通信機器用や電子機器用の製品とは、対象電圧や設計思想が異なる場合が多い。