1 定義

純虚数は、実数部が 0 で、虚数部だけをもつ複素数である。通常は \(ai\) の形で表され、\(a\) は実数、\(i\) は \(i^2=-1\) を満たす虚数単位である。ここで \(a\neq 0\) とするのが一般的で、0 は純虚数に含めない扱いが多い。

1.1 複素数と虚数部

複素数は一般に \(a+bi\) の形で書かれ、\(a\) を実数部、\(b\) を虚数部の係数と呼ぶ。純虚数では実数部 \(a\) が 0 なので、\(bi\) だけが残る。したがって、純虚数は複素数全体の中で、実軸上ではなく虚軸方向にだけ成分をもつ数として位置づけられる。

1.2 純虚数の条件

ある複素数 \(a+bi\) が純虚数であるためには、実数部が 0 でなければならない。つまり \(a=0\) のときに限り \(bi\) は純虚数となる。さらに、通常の定義では \(b\neq 0\) を要し、0 を除外することが多い。これは純虚数という語が、実際に虚部をもつ数を指すためである。

1.3 具体例

\(3i\)、\(-\frac{1}{2}i\)、\(7i\) などは純虚数である。これに対して、\(2+3i\) は実数部が 2 なので純虚数ではない。\(0\) は複素数としては特別な値だが、純虚数としては扱わないのが一般的である。

2 性質

純虚数は、実数とは異なる代数的・幾何学的性質をもつ。特に、実数軸に対して垂直な方向に並ぶ点として理解でき、共役複素数や絶対値の計算でも特徴がはっきり表れる。

2.1 実数との違い

実数は複素数のうち虚数部が 0 のものだが、純虚数は実数部が 0 で虚数部が非 0 のものを指す。両者は複素数平面上で直交する軸に対応し、数の表し方と演算結果の性質が異なる。たとえば、実数同士の積は実数にとどまるが、純虚数の積はしばしば実数になる。

2.2 複素平面での位置

複素平面では、横軸を実軸、縦軸を虚軸とする。純虚数 \(bi\) は、点 \((0,b)\) に対応し、虚軸上に位置する。実軸上に点をもたないため、図形的には原点を通る縦の直線上の数として表される。

2.3 絶対値と符号

純虚数 \(bi\) の絶対値は \(b\) に等しい。これは複素数の絶対値が原点からの距離として定義されるためである。一方、純虚数には実数のような正負の大小関係は一般に定められない。したがって、符号は係数 \(b\) の正負として表現されるが、数全体を順序づけることはできない。

2.4 共役複素数との関係

複素数 \(a+bi\) の共役複素数は \(a-bi\) である。純虚数 \(bi\) の共役は \(-bi\) となり、符号が反転するだけである。特に、純虚数とその共役を足すと 0 になり、掛けると \(b^2\) という正の実数が得られる。

3 計算

純虚数は複素数の一部であるため、通常の複素数演算の規則に従う。ただし、\(i^2=-1\) が成り立つため、乗法や冪乗では実数とは異なる振る舞いを示す。

3.1 加法と減法

純虚数同士の加法では、係数をそのまま足し合わせる。たとえば、\(3i+5i=8i\) である。減法も同様に、係数の差を取ればよい。純虚数と実数を加減する場合は、結果は一般に純虚数にはならず、複素数になる。

3.2 乗法

純虚数どうしの積は、\(i^2=-1\) のため実数になる。たとえば、\((2i)(3i)=6i^2=-6\) である。純虚数を含む積では、係数の積に加えて \(i\) の冪を整理することで、実数部と虚数部を求められる。

3.3 除法

純虚数の除法では、分母の \(i\) を処理するために、有理化の考え方が用いられる。たとえば \(\frac{4i}{2i}=2\) であり、同じ純虚数同士の比は実数になることがある。一般の式では、分母に共役を掛けて分母を実数化する方法が基本である。

3.4 冪乗の性質

純虚数の冪乗は、\(i\) の周期性に従って値が循環する。\(i^1=i\)、\(i^2=-1\)、\(i^3=-i\)、\(i^4=1\) となり、以後これが繰り返される。したがって、純虚数の高次の冪を計算する際は、指数を 4 で割った余りを利用すると簡潔に処理できる。

4 代数的な扱い

純虚数は、方程式や多項式の解として自然に現れる。特に、負の数の平方根を考える場面や、指数関数三角関数との結びつきにおいて重要である。

4.1 方程式の解としての純虚数

実数の範囲では解をもたない方程式でも、複素数まで拡張すると純虚数が解になることがある。代表例は \(x^2+1=0\) で、解は \(x=\pm i\) である。これは、純虚数が実数の枠を超えて方程式の解を補完する役割を果たすことを示している。

4.2 二次方程式との関係

二次方程式の判別式が負になると、解は共役な純虚数を含む複素数になる。たとえば \(x^2+4=0\) の解は \(x=\pm 2i\) である。実数係数の二次方程式では、非実数解は通常、互いに共役な組として現れる。

4.3 多項式の根としての純虚数

多項式の係数が実数であるとき、純虚数が根になる場合、その共役も根になる。これは共役根定理として知られる性質である。たとえば、\((x-3i)(x+3i)=x^2+9\) となり、純虚数の根は実数係数多項式の因数分解に反映される。

4.4 指数表示との関係

純虚数は、複素指数関数の表示と深く結びつく。オイラーの公式 \(e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta\) により、純虚数を含む複素数は回転や周期的変化と対応づけられる。特に、純虚数は複素平面上での角度情報を扱う際の基礎となる。

5 応用と関連項目

純虚数は、純粋な代数概念にとどまらず、複素平面の幾何学、三角関数、指数関数の理論で広く用いられる。数式の整理だけでなく、回転や振動を記述する場面でも現れる。

5.1 複素数平面での利用

複素数平面では、純虚数は虚軸上の位置を表すため、数の視覚化に役立つ。これにより、複素数の加法は平行移動、乗法は拡大と回転として理解しやすくなる。純虚数は、その中でも回転成分を考える際の基本例として扱われる。

5.2 三角関数との関係

純虚数は、三角関数を用いた複素数表示に現れる。オイラーの公式により、\(\sin\) や \(\cos\) の組み合わせとして複素数を表現できるため、純虚数は角度の情報と結びつく。これにより、三角関数の周期性と複素数の回転的性質が対応する。

5.3 指数関数との関係

指数関数 \(e^{z}\) は複素数 \(z\) に対しても定義され、特に \(z\) が純虚数のとき、結果は単位円上の点を与える。これは、純虚数を指数に入れると、実数の増減ではなく回転が表れることを意味する。こうした性質は、複素解析信号処理で重要である。

5.4 関連する数学用語

純虚数を理解するには、複素数、実数部、虚数部、虚数単位、複素平面、共役複素数、絶対値、オイラーの公式といった用語が関連する。これらは相互に結びついており、純虚数の性質を整理するための基礎語彙となる。