1 概念
土地被覆は、地表を覆っている物質や構造の種類を示す概念である。森林、草地、水域、農地、市街地、裸地などの分布を整理することで、ある地域の表面状態を把握できる。地理学、環境科学、土地管理の分野で基礎資料として扱われる。
1.1 定義
土地被覆とは、地表が何によって覆われているかを示す分類項目である。対象には植生、土壌、水、建築物、舗装面などが含まれる。分類の単位は用途に応じて異なり、広域的な大分類から、より細かな区分まで設定される。
1.2 土地利用との違い
土地被覆は、地表の物理的な覆われ方に着目する。一方、土地利用は、その場所が人間にどのように使われているかを示す。たとえば、同じ森林でも、保全林、伐採地、レクリエーション利用地では土地利用が異なりうるが、土地被覆としては森林に分類されることがある。
1.3 土地被覆の意義
土地被覆の把握は、環境変化を数量的に捉えるうえで重要である。森林減少、都市化、乾燥化、浸水域の拡大などの現象を比較しやすくし、地域の資源管理や計画立案にも役立つ。また、気候、土壌、水循環との関係を分析する基盤情報にもなる。
2 分類
土地被覆の分類は、自然要素と人工要素を中心に整理されることが多い。実際の地表は単一の種類だけで構成されるとは限らず、複数の要素が重なって現れる。したがって、分類体系は観測目的や地図の縮尺に応じて調整される。
2.1 自然的土地被覆
自然的土地被覆は、主として自然の過程で形成される地表の覆いである。植生、水面、露出した地表などが含まれる。人為的な改変を受けていても、自然要素が優勢な場合はこの区分に入れられることがある。
2.1.1 森林
森林は、樹木が優占する土地被覆である。樹冠の密度、高さ、樹種の構成により見え方は異なる。水源涵養、生物多様性の維持、土壌保全など、多面的な機能をもつ。
2.1.2 草地
草地は、草本植物が広く分布する被覆である。自然草原のほか、放牧地や管理された芝地も含まれる場合がある。気候や利用形態によって、短草地から高茎草地まで幅がある。
2.1.3 水域
水域は、湖沼、河川、湿地、海面などの水で覆われた部分を指す。季節変動や降水量の影響を受けやすく、境界が変化しやすい。土地被覆図では、水面の広がりを把握する主要な項目になる。
2.1.4 裸地
裸地は、植生や人工被覆がほとんどなく、土壌や岩盤が露出した状態である。砂地、岩場、工事後の地表などが含まれる。侵食、火山活動、乾燥などによって生じることがある。
2.2 人工的土地被覆
人工的土地被覆は、人間の活動によって形成・改変された地表である。建築物、舗装、耕作面などが代表例で、利用の強度や密度によって外観が大きく変わる。都市化の進行に伴い、面積が増加しやすい。
2.2.1 市街地
市街地は、建物や舗装面が密集する土地被覆である。住宅、商業施設、工業施設、公共建築などが混在しやすい。地表の不透水化が進むため、熱環境や流出特性に影響を与える。
2.2.2 農地
農地は、作物の栽培に用いられる土地被覆である。田、畑、果樹園、プランテーションなどが含まれる。季節によって景観が変化し、収穫後は裸地に近い状態として観測されることもある。
2.2.3 交通用地
交通用地は、道路、鉄道、空港、港湾施設など、移動や輸送に使われる被覆を指す。線状または帯状に分布することが多く、周囲の土地利用と結びついて機能する。広域では面積比は小さくても、地域構造への影響は大きい。
2.3 混在的土地被覆
混在的土地被覆は、自然要素と人工要素が近接または重複して見られる状態である。都市と植生、農地と集落のように、複数の被覆が細かく入り組んでいる。詳細な分類や高解像度データでないと把握しにくい。
2.3.1 都市緑地
都市緑地は、市街地の中にある樹木、草地、公園、街路樹などの緑の被覆である。都市景観を和らげるだけでなく、気温の緩和や雨水の滞留にも関与する。規模は小さくても、分布の仕方が重要になる。
2.3.2 農村混合景観
農村混合景観は、農地、集落、林地、草地が細分化して配置された土地被覆である。土地の利用形態が複雑で、季節や営農形態によって見た目が変わりやすい。モザイク状の景観として記述されることが多い。
3 観測と分類方法
土地被覆の把握には、地上観測と空中・宇宙からの観測を組み合わせる方法が用いられる。対象地域の広さ、必要な精度、更新頻度に応じて手法が選ばれる。近年は画像処理技術の発達により、自動化も進んでいる。
3.1 現地調査
現地調査は、実際に対象地へ赴いて被覆の種類を確認する方法である。精度が高く、分類基準の検証にも適している。一方で、広域を扱う場合は時間と労力がかかるため、他のデータと併用されることが多い。
3.2 航空写真
航空写真は、上空から撮影した画像を用いて土地被覆を判読する手法である。衛星画像より高い空間分解能を得やすく、細かな対象の識別に向く。撮影時刻や角度の違いによる見え方の変化には注意が必要である。
3.3 衛星リモートセンシング
衛星リモートセンシングは、人工衛星が取得する画像や観測データを利用して土地被覆を分析する方法である。広域を同時に観測でき、同じ基準で繰り返し記録できる点が利点である。長期変化の追跡にも適している。
3.3.1 画像判読
画像判読は、色調、形状、模様、陰影、周囲との関係などを手がかりに被覆を識別する方法である。経験的な判断が重要で、複雑な地域では有効性が高い。解像度や撮影条件によって判読の難易度は変わる。
3.3.2 自動分類
自動分類は、画像の画素や領域を計算機によって区分する方法である。統計的手法や機械学習が用いられ、作業の効率化に寄与する。精度は教師データの質や分類体系の設定に左右される。
3.3.3 時系列解析
時系列解析は、同じ地域の画像を複数時点で比較し、変化の推移を調べる方法である。季節変動と長期変化を区別することが重要になる。都市拡大、森林の減少、冠水域の増減などの検出に利用される。
3.4 土地被覆図の作成
土地被覆図は、観測結果を地図として整理したものである。分類項目ごとに色分けし、分布の広がりや境界を示す。行政、研究、教育の各分野で利用され、比較や更新がしやすい形で作成される。
4 応用
土地被覆情報は、単なる地図資料にとどまらず、政策、管理、研究の多方面で活用される。対象地域の現状把握だけでなく、将来予測や影響評価の基礎にもなる。用途に応じて、分類の粒度や更新頻度が調整される。
4.1 環境モニタリング
環境モニタリングでは、土地被覆の変化から生態系や地表条件の変動を監視する。森林の減少、湿地の縮小、都市域の拡大などを継続的に記録できる。保全計画の立案や効果検証にも役立つ。
4.2 都市計画
都市計画では、土地被覆を使って市街地の拡大、緑地の配置、交通網の影響を把握する。地表の不透水化やヒートアイランド対策を考える際にも重要である。将来の土地利用構想を検討する際の基礎資料となる。
4.3 農業管理
農業管理では、作付地の分布、休耕地の把握、灌漑や土壌状態の推定に利用される。作物の生育段階や収穫時期による見え方の変化も分析対象になる。広域の農地監視や生産計画の支援に有効である。
4.4 自然災害評価
自然災害評価では、洪水、土砂災害、火災などによる土地被覆の変化を確認する。被害範囲の推定、復旧状況の把握、脆弱地域の抽出に役立つ。災害前後の比較により、影響の程度を客観的に示せる。
4.5 気候変動研究
気候変動研究では、土地被覆の変化が反射率、蒸発散、炭素循環に与える影響を調べる。逆に、気温や降水の変化が植生分布や水域の広がりに及ぼす作用も分析される。地域気候と地表変化の相互関係を理解する手がかりとなる。