1 定義
和集合は、複数の集合に含まれる要素を重ね合わせ、少なくとも一方に属するものを集めてできる集合である。集合論では基本的な演算の一つに位置づけられ、対象の全体を「まとめて見る」ための標準的な方法として用いられる。
1.1 基本定義
2つ以上の集合 \(A, B, C, \dots\) に対し、それらの和集合は、いずれかの集合に含まれる要素をすべて集めた集合として定義される。言い換えると、個々の集合を一つの大きな集まりとして再編成したものが和集合である。要素の重複は考えず、同じ要素は1回だけ数える。
1.2 記法
和集合は通常、記号 \(\cup\) で表す。たとえば \(A \cup B\) は「AとBの和集合」を意味する。3つ以上の集合についても同様に \(A \cup B \cup C\) のように書く。読み方は「A または B」ではなく、「A または B のどちらか、あるいは両方に属する」と捉えると正確である。
1.3 要素の所属条件
要素 \(x\) が \(A \cup B\) に属するのは、\(x \in A\) または \(x \in B\) の少なくとも一方が成り立つときである。複数の集合を扱う場合も同様で、いずれかの集合に入っていれば和集合に含まれる。したがって、共通に含まれる要素も排除されず、むしろそのまま保持される。
2 例
和集合は具体例を通して理解しやすい。要素の集まり方を確かめると、定義が直感的に把握できる。
2.1 二つの集合の和集合
たとえば \(A=\{1,2,3\}\)、\(B=\{3,4,5\}\) のとき、\(A \cup B=\{1,2,3,4,5\}\) となる。3は両方に含まれるが、結果では1つの要素として扱われる。和集合は「重なりを保ったまま全体をまとめる」操作だといえる。
2.2 三つ以上の集合の和集合
\(A=\{a,b\}\)、\(B=\{b,c\}\)、\(C=\{c,d\}\) なら、\(A \cup B \cup C=\{a,b,c,d\}\) である。各集合の要素が順に取り込まれ、共通要素もそのまま残る。集合の数が増えても、考え方は変わらない。
2.3 空集合を含む場合
空集合 \(\varnothing\) は要素を一つも持たないため、他の集合との和集合に加えても結果は変わらない。たとえば \(A \cup \varnothing = A\) である。これは空集合が和集合に対して中立的な役割を持つことを示している。
3 性質
和集合には、計算や証明で役立つ基本法則がある。これらは集合の並べ方や組み合わせ方を柔軟に扱うための土台となる。
3.1 交換法則
和集合では、順序を入れ替えても結果は変わらない。すなわち \(A \cup B = B \cup A\) が成り立つ。どちらを先に書いても同じ集合を表すため、記法上の自由度が高い。
3.2 結合法則
3つ以上の集合を和にするとき、括り方を変えても結果は同じである。\( (A \cup B) \cup C = A \cup (B \cup C) \) となる。これにより、複数の集合の結合を一連の操作として扱える。
3.3 冪等法則
同じ集合を自分自身と和にしても変化しない。\(A \cup A = A\) である。要素を重複して加えても、集合では同一要素が1つとして扱われるため、この性質が成立する。
3.4 吸収に関する性質
和集合は、ある集合が別の集合を含む場合に簡潔な形を保つことがある。たとえば \(A \subseteq B\) なら \(A \cup B = B\) となる。小さい集合の要素はすでに大きい集合に含まれているため、新しい要素は増えない。
4 関連概念
和集合は、他の集合演算と対比すると意味がより明確になる。特に共通部分、差集合、補集合との関係は基本的である。
4.1 共通部分
共通部分は、複数の集合に同時に含まれる要素だけを取り出す演算で、記号 \(\cap\) で表す。和集合が「広げる」操作であるのに対し、共通部分は「絞り込む」操作といえる。両者は対照的だが、集合の構造を理解するうえで相補的である。
4.2 差集合
差集合は、ある集合から別の集合に属する要素を除いたものを表す。たとえば \(A \setminus B\) は、Aに入っていてBに入っていない要素の集まりである。和集合が要素を加えるのに対し、差集合は不要な要素を取り除く。
4.3 補集合
補集合は、ある全体集合の中で、特定の集合に含まれない要素を集めたものである。和集合と補集合を組み合わせると、対象の範囲を広げたり反転させたりする操作が可能になる。集合演算の中でも、論理的な対応が明瞭な概念である。
4.4 包含関係との関係
包含関係 \(A \subseteq B\) は、Aのすべての要素がBに入っていることを示す。和集合はこの関係と密接に結びつき、どの集合を加えても全体がどう変わるかを判断する手がかりになる。ある集合が別の集合に含まれていれば、和集合は実質的に大きい方の集合に一致する。