1 定義
中央値は、数値を小さい順または大きい順に並べたとき、ちょうど中央に来る代表値である。データの位置を基準に定めるため、極端に大きい値や小さい値の影響を受けにくく、典型的な水準を示す指標として用いられる。
1.1 基本的な考え方
中央値は、データ全体を左右に二分する境界点として理解できる。少なくとも半数の値がそれ以下、残りの半数がそれ以上に位置するように定義されるため、分布の中心を直感的に把握しやすい。
1.2 データの並べ替え
中央値を求める前には、まず観測値を順序に従って整列させる。並び替えの基準は数値の大小であり、元の入力順は考慮しない。離散値でも連続値でも、この手順は共通である。
1.3 中央値の位置
データ数が奇数なら中央に1つの値が現れ、それがそのまま中央値になる。偶数なら中央の2つの値が境界をつくり、その間の処理によって中央値を定めるのが一般的である。
2 求め方
中央値の算出方法は、データ数の偶奇によって異なる。どの場合も、最初に昇順または降順へ整列させる点は同じである。
2.1 データ数が奇数の場合
観測値が奇数個なら、並べたときに中央に位置する1個の値を選ぶ。たとえば5個のデータなら、3番目の値が中央値となる。
2.2 データ数が偶数の場合
偶数個のデータでは、中央に2つの値が並ぶ。このため、どの値を代表とみなすかを補う処理が必要になる。
2.2.1 中央の2値の平均
一般的な方法では、中央の2値の算術平均を中央値とする。たとえば4個のデータで中央が2番目と3番目の値なら、その2つを足して2で割った値が中央値になる。
2.2.2 実例による計算
データが 2, 4, 7, 9 の4個なら、中央の2値は4と7である。したがって中央値は 5.5 となる。別の例として、1, 3, 8, 12, 20 では5個あるため、中央の8がそのまま中央値になる。
2.3 順序尺度における扱い
中央値は、数値間の差が厳密に等間隔でなくても、順序が分かれば適用できる。したがって、満足度の段階評価のような順序尺度にも使われることがある。ただし、値の間隔を数量的に解釈する用途には向かない。
3 性質
中央値は、平均値とは異なる特徴を持つ。分布の形に左右されにくく、代表値として安定している点が長所である。
3.1 外れ値への頑健性
極端に大きい値や小さい値が少数含まれていても、中央値は大きく動きにくい。これに対して平均値は、外れた観測に引っ張られやすい。そのため、偏りの強い分布では中央値のほうが実態に近い印象を与えることがある。
3.2 平均値との違い
平均値は全データを合計して件数で割るのに対し、中央値は並び順に基づいて決める。この違いにより、同じ集合でも両者が大きく異なることがある。特に収入や価格のように右に長い分布では、その差が目立ちやすい。
3.3 一意性と複数解の扱い
通常の定義では中央値は1つに定まるが、偶数個のデータで中央の2値の平均を取らない流儀では、中央値の考え方に複数の解釈が生じる場合がある。実務や教科書では、算術平均を用いる定義が広く採用されている。
4 関連する統計量
中央値は、他の記述統計と組み合わせることで、分布の様子をより立体的に捉えられる。
4.1 四分位数
四分位数は、データを4等分する位置を示す指標である。第2四分位数は中央値に相当し、第1四分位数と第3四分位数は中央値との差を把握する際に役立つ。
4.2 中央範囲
中央範囲は、データ全体の中ほどの広がりを示す簡潔な尺度である。通常は最小値と最大値の中間を指すが、文脈によっては中央付近のばらつきを表す用途で使われることもある。
4.3 最頻値
最頻値は、最も頻繁に現れる値である。中央値が位置の中心を表すのに対し、最頻値は出現回数の多さに注目する。分布の山の位置を知る際に有用である。
4.4 算術平均
算術平均は、全体を均等に配分したときの値として理解される。中央値と比べると、極端な値の影響を受けやすいが、全体量の把握には向いている。両者を併記すると、データの偏りが見えやすい。
5 応用
中央値は、単なる計算結果ではなく、現実のデータを解釈するための実用的な道具である。分布が非対称な場面ほど、その利点が生きる。
5.1 記述統計
記述統計では、中央値は代表値の一つとして基本的に扱われる。平均値、最頻値、四分位数などと並べて示すことで、中心傾向とばらつきの両方を整理しやすくなる。
5.2 所得や価格の分析
所得や不動産価格のように高額側へ裾が伸びやすいデータでは、中央値が実感に近い水準を示すことが多い。少数の高値が平均を押し上げる状況でも、中央値は中間層の位置を比較的素直に表す。
5.3 データの要約と比較
複数の集団を比較する際、中央値は分布の中心を簡潔に示す。例えば、地域別、年代別、店舗別のデータを並べると、代表的な水準の差を見つけやすい。外れ値が多い場合でも、比較の基準として使いやすい。
6 発展的な話題
中央値は基本的な統計量である一方、より一般化された定式化や応用法もある。
6.1 中央値との差の最小化
中央値は、各データとの絶対偏差の合計を最小にする値として知られる。この性質により、外れた観測に左右されにくい解として位置づけられる。誤差の評価で絶対値を重視する考え方とも相性がよい。
6.2 重み付き中央値
重み付き中央値は、各データに重要度や頻度を与えて求める中央値である。観測ごとの重みを考慮するため、単純な並び順だけではなく、累積された重みが中央に達する位置が基準となる。
6.3 集合データにおける中央値
階級にまとめられた度数分布表など、個々の値が直接わからない場合にも中央値は推定できる。通常は累積度数を用いて中央値の階級を特定し、その内部で補間して近似値を得る。