原作との関係
『ヒックとドラゴン』シリーズは、イギリスの児童文学作家クレシッダ・コーウェルが2003年に刊行した同名小説を原作とする。映画版は原作の核となる要素——バイキングの少年とドラゴンの友情——を継承しつつ、設定やストーリー展開を大幅に改変している。原作ではドラゴンが知的で話す能力を持つが、映画では動物に近い存在として描かれる。また、原作は全12巻のシリーズであり、映画は独自の完結ストーリーを構築した。
制作の経緯
ドリームワークス・アニメーションは2005年頃からこのプロジェクトを始動。監督にはクリス・サンダースとディーン・デュボアが起用された。サンダースは『リロ・アンド・スティッチ』の監督経験を活かし、ドラゴンのデザインや飛行シーンのリアリティにこだわった。制作費は約1億6500万ドル。第1作は2010年3月に公開され、その後2014年に第2作、2019年に第3作が公開された。
第1作『ヒックとドラゴン』
バイキングの部族が住むバーク島では、ドラゴンは脅威とみなされていた。族長の息子ヒックは、村で最も弱い少年として周囲に認められない日々を送る。ある日、彼は負傷したドラゴン・トゥースレスに出会い、傷を治療する。次第にトゥースレスとの友情を育むヒックは、ドラゴンに対する村人の偏見を変えようと奮闘する。最終的にヒックはトゥースレスと共に巨大ドラゴン・レッドデスを倒し、村はドラゴンと共存する道を選ぶ。
第2作『ヒックとドラゴン2』
数年後、ヒックはバーク島でドラゴンと人間の平和な暮らしを築いていた。しかし、ドラゴンを支配しようとするドラゴンハンターのリーダー、ドラゴと出会う。さらに、ヒックは生別した母親ヴァルカがドラゴンの聖地で暮らしていることを知る。ヒックは父ストイックの死を乗り越え、新たな脅威に立ち向かう決意を固める。
第3作『ヒックとドラゴン3』
ヒックはバーク島の族長として、ドラゴンと人間の未来に悩む。一方、ホワイトフューリーの雌ドラゴン・ライトフューリーが現れ、トゥースレスに恋をする。ヒックはドラゴンハンターのグリメルに追われる中、トゥースレスを自由にする決断をする。最終的に、ドラゴンは人間の世界を離れ、隠された秘境「ヒドゥンワールド」へ移住する。ヒックとアスティは結婚し、新たな時代を迎える。
主要キャラクター
ヒック・ホレンド・ハドック3世
バーク島の族長ストイックの息子。体が小さく発明好きで、村の戦士としての価値観に馴染めずにいた。トゥースレスとの出会いを機に、ドラゴンと人間の共存の道を模索する。シリーズを通じて成長し、第3作では族長となり、理想を現実にするリーダーとなる。
トゥースレス(牙なし)
希少種ナイトフューリーのドラゴン。尾翼の半分を欠損しており、ヒックが人工尾翼を作って飛行を助ける。高い知能と忠誠心を持ち、人間の言葉は話せないが、表情や行動で感情を表現する。第3作ではライトフューリーと恋に落ち、ヒドゥンワールドへ去る。
アスティ・ホファーソン
ヒックの幼なじみで、後に恋人となる女性。戦士としての腕前は村でもトップクラス。当初はドラゴンに対して否定的だったが、ヒックの行動に影響されて考えを改める。第3作でヒックと結婚する。
サブキャラクター
ストイック・ザ・ヴァスト
ヒックの父親でバーク島の族長。巨大な体格と強面の戦士だが、息子を深く愛している。第2作でトゥースレスを庇って命を落とす。
ゴバー・ザ・ベルチ
村の鍛冶屋で、ヒックの師匠的存在。隻腕で眼帯をしており、ユーモアを交えたアドバイスを授ける。
フィッシュレッグス、スノット、ラフナット、タフナット
ヒックのドラゴン訓練クラスの仲間たち。フィッシュレッグスは知識豊富な少年、スノットは生意気な戦士、ラフナットとタフナットは双子の兄妹で破天荒な性格。それぞれドラゴンと絆を結び、仲間として活躍する。
バーク島(バイキングの村)
北海に浮かぶ孤島で、頑丈なバイキングの部族が暮らす。石造りの長屋や訓練場が立ち並び、周囲は断崖絶壁に囲まれている。第1作ではドラゴンの襲撃に悩まされていたが、物語の進行に伴いドラゴンと共生する村へと変貌する。
ドラゴンの生態と種類
ナイトフューリー(トゥースレスの種族)
極めて希少なドラゴン種。体は黒く、大きな翼と短い尾が特徴。超音速で飛行し、プラズマ弾を発射する能力を持つ。高い知性と学習能力を備え、仲間意識が強い。唯一の弱点は尾翼の欠損による飛行バランスの喪失。
その他の代表種
- デッドリー・ナッダー:アスティの相棒ドラゴン。鮮やかな翡翠色で、尾の先端が毒針状。やや攻撃的。
- モンストラス・ナイトメア:スノットの相棒。巨大な赤いドラゴンで、火炎放射能力が強力。
- グロンクル:フィッシュレッグスの相棒。小さな体と装甲のような皮膚を持ち、岩を食べる。
- ゼベック:ラフナットとタフナットの双子が乗るドラゴン。3つの頭を持つ。
ドラゴンライディングの技法と文化
バーク島では「ドラゴントレーニング」と呼ばれる教育プログラムが確立されている。人間とドラゴンはパートナーとして信頼関係を築き、鞍や手綱を使わずに体重移動や声掛けだけで操縦する。飛行技や戦闘術は世代を超えて継承され、ドラゴンと人間の絆が部族の誇りとなる。
監督・脚本
- 第1作:監督クリス・サンダース、ディーン・デュボア/脚本ウィル・デイヴィス、サンダース、デュボア
- 第2作:監督ディーン・デュボア/脚本デュボア
- 第3作:監督ディーン・デュボア/脚本デュボア
声優(日本語吹き替え含む)
*主要英語声優*
- ヒック:ジェイ・バルチェル
- トゥースレス:効果音(声なし)
- アスティ:アメリカ・フェレーラ
- ストイック:ジェラルド・バトラー
- ゴバー:クレイグ・ファーガソン
*日本語吹き替え*
- ヒック:田谷隼
- トゥースレス:効果音
- アスティ:寿美菜子
- ストイック:石住昭彦
- ゴバー:後藤哲夫
作曲家(ジョン・パウエル)
全3作の音楽を手掛けた。スコットランド民俗音楽とオーケストラを融合させた壮大なサウンドが特徴。特に第1作の「Test Drive」はドラゴンの飛行シーンと共に高く評価され、アカデミー賞作曲賞にノミネートされた。
主題歌・劇中歌
第1作エンドクレジットにはジョヴィの「Sticks & Stones」が使用された。第2作ではシガー・ロスの「Where No One Goes」、第3作ではジョン・パウエル作曲のインストゥルメンタル曲「Together from Afar」など。
映画シリーズ
短編作品(『ドラゴンの贈り物』など)
- 『ドラゴンの贈り物』(2011年):クリスマスを舞台にした11分の短編。
- 『ドラゴンズ:黎明の書』(2014年):第2作への導入となる短編。
- 『ヒックとドラゴン:故郷への旅』(2019年):第3作の後日談。
テレビシリーズ
『ドラゴンレース』
2012年から2014年まで放送されたカートゥーンネットワークのシリーズ。第1作と第2作の間の出来事を描く。
『ドラゴンズ: レース・トゥ・ザ・エッジ』
2015年から2018年までNetflixで配信。全6シーズン。ヒックたちが新たな島々を探索し、ドラゴンハンターと戦う冒険を描く。
ゲーム・コミカライズ
複数のプラットフォームでゲーム化され、ニンテンドーDS、PS3、Xbox 360などで発売。漫画版はグラフィックノベルとして刊行され、映画のストーリーを補完するエピソードを含む。
映画賞
- 第1作:アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート、アニー賞12部門受賞(うち長編アニメ賞含む5部門)、ゴールデングローブ賞ノミネート
- 第2作:アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート、アニー賞5部門受賞
- 第3作:アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート、ゴールデングローブ賞ノミネート
批評家・観客の反応
Rotten Tomatoesで第1作は99%の支持率、第2作は92%、第3作は91%と高評価。特に第1作は「ドラゴンの飛行描写が革新的」「友情の物語が感動的」と称賛された。シリーズ全体として、単なる児童向けアニメを超えた深いテーマ性が大人の観客からも支持された。
テーマパークアトラクション
ユニバーサル・スタジオの各パークに「ヒックとドラゴン」関連アトラクションが存在。特にユニバーサル・スタジオ・オーランドの「ドラゴンレース」は、実際にドラゴンに乗って飛ぶ感覚を疑似体験できるライドとして人気。
関連商品・グッズ
レゴシリーズ、ぬいぐるみ、フィギュア、衣料品など多数。特にトゥースレスを模したぬいぐるみは世界的にヒット。絵本版やDVDの累計売上も高く、シリーズ全体の関連商品は数十億ドル規模の市場を形成した。