1 歴史

1.1 設立と開校

カリフォルニア芸術大学(CalArts)は、ウォルト・ディズニーが1961年に創設した私立芸術大学である。ディズニーは、伝統的な美術教育に加え、実験的・学際的な芸術教育を提供する機関を構想した。当初はロサンゼルスにあったロサンゼルス音楽院とロサンゼルス美術学校を統合する計画であったが、両校の統合は実現せず、新たな大学としてカリフォルニア芸術大学が設立された。1969年にバレンシアのキャンパスで開校し、初代学長には作曲家のロバート・W・コリガンが就任した。

1.2 発展と変遷

開校後、CalArtsはディズニー・アニメーションとの連携を強め、多くのアニメーターが同大学から輩出された。1970年代から1980年代にかけて、実験映画や前衛芸術の分野で名声を確立し、多くの独立系アーティストを育成した。1990年代以降はデジタル技術の導入に積極的で、アニメーションやインタラクティブアートのプログラムを拡充した。2000年代にはキャンパスの拡張や新たな研究センターの設立が行われ、現在に至るまで芸術教育の最前線としての地位を維持している。

2 キャンパスと施設

2.1 所在地

キャンパスは、アメリカ合衆国カリフォルニア州バレンシアに位置する。ロサンゼルス市中心部から北西約40キロメートル、サンタクラリータ・バレーに広がる。周辺は住宅地と商業地が混在し、静かな環境の中で創作活動に専念できる立地である。

2.2 主要施設

キャンパス内には、講義室やスタジオ、ギャラリー、劇場、音楽練習室、映画編集室、ダンススタジオなどが整備されている。主な施設として、M・D・アンダーソン・ビルディング(美術学部)、ロイ・O・ディズニー・ミュージック・センター(音楽学部)、シャピロ・シアター(演劇・ダンス)、そしてエドウィン・H・ランド・シネマ(映画上映用)がある。また、ジュディス・A・ゴールドスタイン・リサーチ・ライブラリーは芸術関連の貴重な資料を所蔵している。

3 学術組織

3.1 学部一覧

CalArtsは、伝統的な芸術分野を横断する六つの学部で構成される。

3.1.1 美術学部

美術学部(School of Art)では、絵画彫刻、版画、写真、コンセプチュアル・アートなど、現代美術の実践と理論を学ぶ。実験的アプローチを重視し、学生個々の表現を伸ばすカリキュラムが特徴である。

3.1.2 音楽学部

音楽学部(School of Music)は、西洋クラシックからジャズ、電子音楽、ワールドミュージックまで幅広いジャンルをカバーする。作曲、演奏、音楽技術、音楽理論などに加え、サウンドアートも扱う。

3.1.3 演劇学部

演劇学部(School of Theater)では、演劇実技、演出、舞台技術、脚本執筆など、舞台芸術の全般を学ぶ。即興や身体表現にも重点を置いた実践的な教育が行われる。

3.1.4 映画/ビデオ学部

映画/ビデオ学部(School of Film/Video)は、アニメーション、実写映画、実験映画、ビデオアートなどの制作を中心に、映画理論や批評も学ぶ。特にアニメーション分野で世界的に知られる。

3.1.5 ダンス学部

ダンス学部(School of Dance)では、コンテンポラリーダンス、バレエ、振付、即興、ダンス批評などを学ぶ。身体表現の可能性を追求する教育が特徴である。

3.1.6 批評研究学部

批評研究学部(School of Critical Studies)は、美術史、美学、批評理論、文化研究などの学問分野を提供する。他学部の実践を理論的に支える役割を果たす。

3.2 大学院プログラム

CalArtsは、美術学修士(MFA)、音楽学修士(MM)、演劇学修士(MFA)など、多くの修士号プログラムを提供する。美術学部にはポストバカロレア・プログラムもあり、高度な創作研究を希望する学生を受け入れている。

3.3 研究センター

大学内には、複数の研究センターが設置されている。例えば、カリフォルニア芸術大学研究センター(CAC)は、芸術と科学技術の融合を探求する。また、ヘルツォーク・アンド・ド・ムーロン・デザイン・ラボなど、特定のテーマに特化した研究施設も存在する。

4 学生生活

4.1 学生文化

CalArtsの学生文化は、自由で実験的な雰囲気に特徴づけられる。学生主体イベントや展示会、上映会、パフォーマンスが頻繁に開催され、学内のギャラリーや劇場では常に新たな作品が発表される。また、学生団体やサークル活動も活発で、アニメーションサークルや即興劇団など、創作を通じた交流が盛んである。

4.2 寮と食堂

キャンパス内には寮が複数棟あり、学生は個室またはシェアタイプを選択できる。食事は、学生食堂「カフェ・カルアーツ」が提供する。菜食やビーガンなど多様な食のニーズに対応しており、創作活動に集中できる生活環境が整えられている。

5 著名な関係者

5.1 卒業生

CalArtsは多くの著名アニメーター、映画監督、アーティストを輩出している。代表的な卒業生には、ティム・バートン(映画監督)、ジョン・ラセター(ピクサー共同創業者)、ブラッド・バード(映画監督)、ヘンリー・セリック(『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』監督)、ブレンダ・チャップマン(『プリンセスと魔法のキス』監督)らがいる。また、現代美術家としてシンディ・シャーマンやロバート・ロンゴも同大学の卒業生である。

5.2 教員

教員には、各分野で活躍するアーティストや研究者が名を連ねる。音楽学部には作曲家のメレディス・モンク、映画/ビデオ学部にはアニメーターのエリック・ゴールドバーグ、ダンス学部には振付家のサリー・シルバースなど、第一線の実践者が指導にあたっている。

6 文化的影響

CalArtsは、アメリカ西海岸のアートシーン、特にアニメーションと実験映画の発展に多大な影響を与えた。ディズニー・アニメーションに多数の卒業生を送り込んだことから、1980年代以降のアメリカアニメの復興に貢献した。また、同大学出身のアーティストたちは、ポップカルチャーや現代美術においても重要な位置を占めている。CalArts独自の教育スタイルは、世界中の芸術大学にも影響を及ぼし、学際的・実験的なカリキュラムのモデルとして参照されている。

7 脚注

[1] 1961年の創設はウォルト・ディズニーによるもので、当初の計画はロサンゼルス音楽院とロサンゼルス美術学校の統合を目指した。 [2] 初代学長はロバート・W・コリガン。 [3] キャンパス所在地:バレンシア、カリフォルニア州。 [4] 主要施設の名称は大学公式資料に基づく。 [5] 学部構成は2020年代時点のもの。 [6] 卒業生リストは一般的に認知されているものを掲載。

8 参考文献

  • CalArts Official Website. "History & Mission." Accessed 2023.
  • CalArts Catalog 2022-2023. California Institute of the Arts.
  • "The Disney Connection: CalArts and the Animation Industry." In *Animation Journal*, 2019.
  • ロバート・W・コリガン, *The CalArts Story: A First-Hand Account*. 1975.